プログラミングに興味を持ち始めたとき、まず直面するのが「どのプログラミング言語を学べばよいのか」という悩みです。JavaScript、Python、Javaなど多数の選択肢があり、「種類が多すぎて何から始めればいいのかわからない」「将来プログラマーやエンジニアとして働くなら、どの言語を習得すれば有利なのだろう」と考える方も多いでしょう。
この記事では、プログラミング言語の基本的な仕組みから、職業別におすすめの言語まで幅広く解説します。これからプログラミングを学んで転職や就職に活かしたい方に向けて、言語選びの指針となる情報をお届けします。
そもそもプログラミング言語とは?
プログラミング言語とは、人間がコンピューターに対して「どのような処理を行ってほしいか」を伝えるための専用の言語です。
日常生活で私たちが日本語や英語を使ってコミュニケーションをとるように、コンピューターとの意思疎通にはプログラミング言語が必要になります。
現在世界中で使われているプログラミング言語は200種類を超えており、特定の言語から派生したものも含めると1,000種類以上存在するといわれています。1950年代に初めて開発されて以来、技術の進歩とともに新しい言語が次々と生み出され続けているのです。
プログラミング言語の仕組み
コンピューターの心臓部であるCPUが理解できるのは、「0」と「1」だけで構成される機械語のみです。しかし人間にとって「0」と「1」の組み合わせだけで複雑な指示を出すことは極めて困難です。そこで、人間とコンピューターの橋渡し役として誕生したのがプログラミング言語なのです。
プログラミング言語を使ってコンピューターに命令を出す際の流れは以下のようになります。
- ソースファイル作成: プログラマーがプログラミング言語で指示を記述
- コンパイル: ソースファイルを中間言語(オブジェクトファイル)に変換
- リンク: オブジェクトファイルを機械語(実行ファイル)に変換
- 実行: コンピューターが機械語を読み取って処理を実行
この一連の変換プロセスにより、人間が理解しやすいテキスト形式の命令が、コンピューターが処理できる形に変換されるのです。
プログラミング言語で何ができる?
プログラミング言語を習得すると、デジタル社会の様々な分野で活躍する機会が広がります。現代の技術革新を支える多くのサービスやシステムは、プログラミング言語によって開発されているからです。
Webサイトの構築
私たちが日常的に利用しているWebサイトは、すべてプログラミング言語によって構築されています。
サイトのデザインやレイアウトから、お問い合わせフォームや決済システムまで、Webサイトのあらゆる機能がプログラミングの力で実現されています。
HTML・CSSによる見た目の制御から、PHPやJavaScriptによる動的な機能まで、複数の言語を組み合わせて多彩なWebサービスが生み出されています。
アプリケーション開発
スマートフォンやパソコンにインストールするアプリケーションも、プログラミング言語の産物です。
SNSアプリ、ゲーム、地図アプリ、資料作成ツールなど、私たちの生活に欠かせないアプリケーションは、それぞれ異なるプログラミング言語で開発されています。
ユーザーが直接操作する画面部分(フロントエンド)と、裏で動作するシステム部分(バックエンド)で、使用される言語も変わってきます。
電子機器の動作制御
家電製品や自動車に搭載されている電子機器の制御にも、プログラミング言語が活用されています。
炊飯器のタイマー機能、洗濯機の各種設定、エアコンの温度調節など、身の回りの便利な機能の多くがプログラミングによって実現されています。
さらに近年では、スマートフォンと連携して家電を操作するIoT(モノのインターネット)技術も普及しており、プログラミングの重要性はますます高まっています。
AI・機械学習プログラムの開発
人工知能(AI)や機械学習システムの開発においても、プログラミング言語は中核的な役割を果たしています。
音声認識技術、画像解析、データ予測など、AI技術を活用したサービスの背景には高度なプログラミング技術があります。ChatGPTのような対話型AIから、医療分野での画像診断支援システムまで、AI技術の発展とともにプログラミングスキルの価値も高まり続けています。
プログラミング言語の種類
プログラミング言語は、開発目的や使用場面に応じて様々な種類が存在します。言語ごとに得意分野や特徴が異なるため、実現したい機能や目標に合わせて適切な言語を選択することが重要です。
C言語
古くから存在するプログラミング言語の1つが「C言語」です。C言語は、OSや他のプログラミング言語を開発するシーンで未だに使われています。扱いや学習が難しいと言われることもあり、あまり初心者向きの言語とはいえないかもしれません。
しかし、古くから需要があるということは、それだけ廃れにくく、安定して一定の開発環境で使われているということです。さまざまなシステムに触れるようになりたい場合には、学習しておいて損はないプログラミング言語です。
Ruby
昔ながらのプログラミング言語から始まって、世界中の開発環境や目的に応じるような形で新しいプログラミング言語が生まれ続けてきました。
そんな中、日本発のプログラミング言語が存在するのをご存じでしょうか?
まつもとゆきひろ氏によって開発されたプログラミング言語「Ruby」です。
Rubyは、スマホゲームやWebサービスなどさまざまな開発環境に対応できるという特徴を持っているプログラミング言語です。また、簡易的な言語であり、プログラマーやエンジニアなどの開発者側への制限もあまりないため、人気があります。
もちろん、Rubyにもデメリットが存在します。
例えば、自由度の高い開発言語である半面、プログラム初心者が学習用のソースコードを記述すると、無駄なソースが増え過ぎてごちゃごちゃした分かり難い記述になりがちです。
同様にプロの開発現場でも、1人のプログラマーが記述したコードが第三者である別のエンジニアには伝わりにくい可能性もあります。
Java
プログラミングの世界でよく聞く「オブジェクト指向」を初めて学ぶなら、「Java」がおすすめです。一方で、Javaを使った開発はどうしても大規模なものになりがちなので、気軽なプログラミング言語とは呼べないのかもしれません。
しかし、Javaは、さまざまなアプリケーション開発に利用できる点とコンピュータのOSに依存しないという優れた特徴を持ちます。
Java以外のプログラミング言語を学習する際にも応用が利くので、「どのプログラミング言語を学ぶのか悩む」というときには、Javaを選択すれば良いのかもしれません。
また、JavaでAndroidアプリを開発できたりもします。
Python
Pythonは、シンプルで読みやすい文法が特徴のプログラミング言語です。「誰が書いても似たようなコードになる」ことを目指して設計されており、チーム開発において威力を発揮します。
近年、AI・機械学習分野での需要が急激に高まっており、データ分析、Webアプリケーション開発、自動化ツールの作成など幅広い用途で活用されています。
学習のしやすさと将来性の高さから、初心者にもおすすめの言語です。
JavaScript
JavaScriptはWeb開発において必須の言語で、Webページに動的な要素を追加するために開発されました。現在では、フロントエンド(ユーザーが見る部分)だけでなく、バックエンド(サーバー側)の開発にも使用されています。
ポップアップウィンドウの表示、アニメーション効果、ユーザーとのインタラクションなど、Webサイトの様々な機能を実現できます。Web開発を学ぶなら必須の言語であり、学習環境も整っているため初心者にもおすすめです。
PHP
PHPは動的なWebサイトやWebアプリケーションの開発に特化したプログラミング言語です。データベースとの連携が容易で、ユーザーの操作に応じて表示内容を変更するようなWebサイトの構築に適しています。
世界最大のCMSであるWordPressもPHPで開発されており、Web開発の現場で高い需要があります。習得しやすい文法で初心者向けでありながら、実用的なWebアプリケーションを構築できる実力派の言語です。
Go
GoはGoogleが開発したプログラミング言語で、シンプルな構文と高速な処理能力が特徴です。大規模なシステム開発や、多数のユーザーが同時にアクセスするWebサービスの開発に適しています。
コードの記述ルールが明確で、チーム開発での保守性が高く、YouTubeやぐるなびなどの有名サービスでも採用されています。比較的新しい言語ですが、将来性が期待される注目の言語です。
Swift
SwiftはAppleが開発したプログラミング言語で、iOSアプリやmacOSアプリの開発に使用されます。従来のObjective-Cよりも読みやすく、安全性の高いコードを書けるよう設計されています。
iPhone、iPad、Apple Watchなど、Apple製品向けのアプリ開発には必須の言語です。Appleエコシステム内での需要は継続的に高く、モバイルアプリ開発者として活躍したい方におすすめです。
Kotlin
KotlinはAndroidアプリ開発の公式言語として採用されている、比較的新しいプログラミング言語です。Javaとの互換性が高く、既存のJavaプロジェクトとも連携しやすい特徴があります。
Javaよりも簡潔にコードを記述でき、エラーを防止する機能も充実しています。Androidアプリ開発に加えて、サーバーサイド開発でも活用されており、将来性の高い言語として注目されています。
C#
C#はMicrosoftが開発したプログラミング言語で、ゲーム開発、Windowsアプリケーション開発、Webアプリケーション開発など幅広い分野で活用されています。
特にUnityというゲーム開発エンジンでの利用が多く、3Dゲーム、VR/ARアプリケーション、モバイルゲームなど様々なプラットフォーム向けのゲーム開発が可能です。習得難易度は高めですが、汎用性と実行速度の面で優れた言語です。
TypeScript
TypeScriptはJavaScriptに型システムを追加した言語で、大規模なWebアプリケーション開発での保守性向上を目的として開発されました。JavaScriptのコードはそのままTypeScriptとしても動作するため、段階的な移行が可能です。
企業での採用率が急速に高まっており、Web開発の現場で重宝される言語として注目されています。JavaScriptの知識があれば比較的習得しやすく、キャリアアップにも有効です。
【職業別】学ぶべきプログラミング言語
プログラミングを活用する職業は多岐にわたり、職種によって求められるスキルや使用する言語が大きく異なります。
目指すキャリアパスに応じて、適切な言語を選択することが成功への近道となります。
Webエンジニア
Webエンジニアは、WebサイトやWebアプリケーションの設計・開発・運用を担当する職業です。
フロントエンド(ユーザーが見る部分)とバックエンド(サーバー側)の両方に関わることが多く、幅広い技術スキルが求められます。
推奨言語: HTML/CSS、JavaScript、TypeScript、Python、PHP、Ruby
フロントエンド開発では、HTML/CSSでサイトの構造とデザインを作成し、JavaScriptで動的な機能を実装します。TypeScriptを習得すれば、より保守性の高いコードを書けるようになります。バックエンド開発では、PythonのDjangoやFlask、PHPのLaravel、RubyのRailsなどのフレームワークを活用することが一般的です。
ゲームエンジニア
ゲームエンジニアは、コンシューマーゲーム、スマートフォンゲーム、PCゲームなどの開発を担当します。
ゲームジャンルやプラットフォームによって使用する言語や技術が変わるため、目指すゲーム開発の分野を明確にしてから言語を選択することが重要です。
推奨言語: C#、C++、JavaScript、Swift、Kotlin
C#はUnityエンジンでの開発に必須で、3Dゲーム、VR/ARアプリ、モバイルゲームなど幅広いプラットフォームに対応できます。C++は高性能が求められるコンシューマーゲームで重宝されます。スマートフォンゲームの場合、iOSはSwift、AndroidはKotlinが有効です。ブラウザゲームならJavaScriptが適しています。
AIエンジニア
AIエンジニアは、人工知能システムや機械学習モデルの開発を行う専門職です。
データの収集・前処理から、アルゴリズムの実装、モデルの評価まで、AI開発の全工程に関わります。数学的知識とプログラミングスキルの両方が必要な、高度な専門性が要求される職業です。
推奨言語: Python、R、Julia、Go
Pythonは機械学習ライブラリ(scikit-learn、TensorFlow、PyTorch)が充実しており、AI開発の標準言語といえます。統計解析に特化したRは、データサイエンス分野で威力を発揮します。高速な数値計算が可能なJuliaは、大規模なデータ処理に適しています。Goは並行処理に強く、AIシステムのインフラ構築に活用されます。
モバイルアプリエンジニア
モバイルアプリエンジニアは、スマートフォンやタブレット向けのアプリケーション開発を専門とする職業です。
iOS、Android、クロスプラットフォーム開発のいずれに特化するかによって、習得すべき言語が決まります。
推奨言語: Swift、Kotlin、Java、Dart(Flutter)、JavaScript(React Native)
iOSアプリ開発にはSwiftが必須です。Androidアプリ開発では、公式言語のKotlinまたは従来のJavaを使用します。効率的に両プラットフォーム向けのアプリを開発したい場合は、FlutterのDartやReact NativeのJavaScriptが有効です。どちらのアプローチでも、モバイル特有の制約や最適化について深く理解する必要があります。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、膨大なデータから価値ある洞察を抽出し、ビジネス課題の解決につなげる専門職です。
統計学、機械学習、プログラミングの知識を組み合わせて、データドリブンな意思決定を支援します。
推奨言語: Python、R、SQL、Scala、Julia
Pythonはデータ分析ライブラリ(pandas、NumPy、matplotlib)が豊富で、データサイエンスの主力言語です。Rは統計解析に特化しており、学術研究や高度な統計分析に強みがあります。SQLはデータベースから必要な情報を抽出するために必須です。Scalaは大規模データ処理、Juliaは高速数値計算で威力を発揮します。
システムエンジニア
システムエンジニアは、企業や組織の業務システム開発プロジェクトにおいて、要件定義から設計、開発、運用まで幅広く担当します。
顧客との調整能力とプログラミングスキルの両方が求められる職業です。
推奨言語: Java、C#、Python、SQL、JavaScript
大規模システム開発ではJavaが多用されており、企業システムの標準言語といえます。Microsoft系の環境ではC#が重宝されます。自動化やデータ処理にはPythonが適しており、データベース操作にはSQLが必須です。Webシステムの場合はJavaScriptも必要になります。幅広い技術スタックに対応できることが、システムエンジニアとしての価値を高めます。
まとめ
プロの開発現場で活躍することを視野に入れるのであれば、JavaやC言語など、学習の段階で「技術者としてしっかりとした土台」が作れるプログラミング言語を選択するべきかもしれません。
しかし、学ぶのが難し過ぎて途中で挫折してしまっては本末転倒です。
初心者に易しく汎用性が高い、他のプログラミング言語を選ぶのも良いと思います。
長所と短所をしっかりと把握して、将来につながるプログラミング言語を学習しましょう。