Webデザインを学んだ後フリーランサーになるには、どうしたらよいのでしょうか。その方法は人や状況によってさまざまで、一つの明確な答えがあるわけではありません。
そこでデジハリ・オンラインスクールは、卒業生をゲストにお招きしたトークイベントを開催。フリーランサーとして活躍する3名がどのようにして現在までたどり着いたのか、それぞれの経験談をお話しいただきました。
さらにデジタルハリウッド卒業生のキャリアをサポートする仕組み・ランサーユニットの担当が登場し、フリーランサーとして活躍していくためのポイントを企業の視点から伝授。当日の様子をレポートにまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
1.イベント概要
タイトル:Webデザインのスキルでフリーランサーになるには
イベント形式:トークイベント(質問コーナーあり)
実施日時:2022年10月24日(月)19:30~21:00
実施方法:オンライン(Zoomウェビナー/無料)
2.登壇者プロフィール
and 1 design 栗原朋美
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美術系大学でグラフィックデザインを学んだのち渡英。
広告代理店、WEB制作会社、商社などを経てフリーランスデザイナーとして活動開始。現在はグラフィックデザイン、WEBデザイン、商品デザインを手掛ける。
若旅宏和
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(公社)日本グラフィックデザイン協会 会員
Hiiibrand Awards 2018・2021 Finalist
企業のブランディングデザインを始め、格闘技団体「RIZIN」のスポンサーポスターなど幅広くデザインを手がける。また群馬県のプロジェクト『tsukurun』でデザインサポーターも務め、子供たちにデザインの教育を行っている。
にしむら
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フリーランスのデザイナー
グラフィックを中心に、印刷物・WEB素材・アニメーションなど幅広く受注する。ロゴやイラスト制作含め、コンセプトから案件全体に関わることを最近考えたりしている。
松田無我
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デジタルハリウッド株式会社 xWORKS事業部
ランサーユニット広報PR担当。デジタルハリウッドで7事業の新規事業を経験、さまざまな角度からクリエイター育成に携わる。WebディレクションからSNSマーケティング、広報PRまで、一つの職種にとらわれず幅広い業務の知識とスキルが強み。現在はランサーユニットの広報PRに注力。
3.自己紹介
栗原朋美さん(以下、栗原):
私は美術系の大学を卒業した後、広告代理店やデザイン事務所で働いていました。グラフィックデザインからキャリアをスタートし、Webデザインや商品デザインにも広げていきました。現在はフリーランサーとして活動中です。
作品はクライアントとの契約であまりお見せできないのですが、美容室のリーフレットと趣味で作成したワインラベルをご紹介します。皆さんも仕事を受ける時は、作品をどこまで公開していいかクライアントに確認して契約書などで書面に残すとよいかもしれません。今日はよろしくお願いいたします。
若旅宏和さん(以下、若旅):
私は群馬県伊勢崎市にて、株式会社若旅デザイン事務所の代表をしています。17年間デザインの制作をしていて、グラフィックデザイン、Webデザイン、企業のブランディングをはじめ幅広く活動してきました。売上が伸びたり強く印象に残ったりする「刺さるデザイン」をポリシーとしています。
2021年からはブランディングカルテット「tasu1chi」を結成。ブランディングの深堀りからWebマーケティングまでチームで行い、そのリーダーを務めています。チームで仕事をするためにも人脈づくりは本当に大事だと思っています。よろしくお願いいたします。
にしむらさん(以下、にしむら):
私は芸術系の学校を卒業してから、テレビ局のCGデザイナーとして8年ほど勤めました。2018年に退職し、個人事業主として開業届を提出。そこからはいわゆるフリーランサーとして活動しています。基本的にはグラフィックデザイナーを生業としていますが、Webサイトや動画など、作れるものは何でも作ります。
同時に、自主制作として個展やイベントにも挑戦しています。達磨寺のキャラクター「コロコ」を制作して絵付けのイベントを開催するなど、アーティストとしても活動中。こうした地域での活動からお仕事につながることも多くてありがたいです。今日はよろしくお願いいたします。
4.トークセッション概要
デザインスキルを活かして多方面で活躍しながら、趣味や地域での活動も楽しんでいるという共通点のある3名。プロフェッショナルな作品の数々を紹介いただいた後は、フリーランサーになりたい方から寄せられたさまざまな疑問にお答えいただきました。
Q.デザインのスキルを習得した後、どのくらいでフリーランサーになりましたか?
A.会社員として経験を積んでから独立!
栗原:
デザインを学んだ後、すぐに独立という形ではなかったです。広告代理店などさまざまな企業で10年間ほど会社員をしていました。働きながらポツポツと頼まれた仕事を受け始めて、軌道に乗ってきた頃にフリーランサーとして独立したという流れです。
若旅:
私も最初は地元の印刷会社で働いていました。もともとグラフィックデザインが専門でしたが時代の流れを読んでWebデザインも習得すべきだと考え、働きながらデジハリ・オンラインスクールに入学。Webデザインを学んでから1年ほどでフリーランサーになりました。勤務先が副業可能だったおかげで少しずつ仕事を始めることができ、その流れで独立しました。
にしむら:
私もすぐには独立していません。テレビ業界で8年間ほど映像系の仕事をしていました。テレビ番組で使用するCGやグラフィックの制作が主な仕事内容です。仕事にめちゃくちゃ疲れてしまって、先のことを考えずに会社を辞めました。無職のような期間があったために会社員時代のつながりはあまり活かせず、もう一度ゼロから仕事を始めています。
「フリーランサーの夢を実現した」というよりは、結果的にやってみて上手くいったという感じです。何事も、やってみることが大切ですね。
Q.フリーランサーになるまでに苦労したことは?
A.収入の波に動じない「鋼の心」を持とう!
にしむら:
自分の中の不安な気持ちと向き合っていくことです。たとえば「お金がない」とか。今も苦労しているかもしれません。
栗原:
フリーランサーとして一番大切なのは「鋼の心を鍛えること」です。お仕事が無くて収入の無い月が普通に発生しますから、いつでも自制心を持ちながら軸をぶらさずにいられるかということは、私の中ですごく大事だと思っています。めっちゃ稼げる時もあれば、ゼロの時もある。その時もヘラヘラしながら過ごせるかどうかが問われます(笑)
にしむら:
仕事がない時こそ、ポートフォリオの作品を増やすチャンス。自分でいろいろな作品を作ってみるのがいいと思います。
若旅:
私が苦労したのは、収入の柱を増やしていくことです。SNSやWeb検索からのご依頼が多いのですが、それだけでなくいろいろな場に参加するようにしています。
たとえばオンラインのビジネスコミュニティや地元の交流会など、多くの場に参加して仕事の柱を増やす努力は続けています。クライアントは東京中心であるものの、地元のつながりも大事にして貢献していきたいですし、人脈づくりに関してはとにかく「できることはなんでもやる」というスタンスです。
Q.最初に受けた案件を覚えていますか?
A.友人や知人のお手伝いからスタート
若旅:
私はとあるビジネスコミュニティに参加しているのですが、その理由はデザイナーが少ない界隈だったからなんです。そこでメンバーから依頼を受けてブログのメインビジュアルを制作したのが最初の仕事でした。2種類を制作して5万円程度の案件だったと思います。
にしむら:
私の最初の仕事も友人の手伝いでした。急ぎで修正してほしいという依頼を受けて5,000円いただいたりとか、キャラクターのアイディアを1点3,000円で出すとか、小遣い稼ぎのような形から始めたと記憶しています。
栗原:
もともと美容業界専門の広告代理店に務めていた経験があるので、美容室の販促物制作が最初の仕事でした。だんだんと経験を積んでいき「これだったらフリーランサーとしてやっていけるかな」と思った段階で会社を辞めて本格的に活動を始めました。
Q.最近、Webデザイン業界ではどのような案件が多いですか?
A.ランディングページやバナー制作の需要は高い
栗原:
ランディングページが多いです。それに伴ってバナーや印刷物も依頼が来ることもあります。
にしむら:
私はコーディングを行っていないので、バナーや画像制作の加工といった案件が多いです。
若旅:
私も比較的ランディングページが多いです。A/Bテストで複数制作する機会も多く、企業からのニーズが増えている印象はありますね。
5.ランサーユニット活用方法
ここで、デジタルハリウッド卒業生のフリーランサー活動をサポートする仕組み「ランサーユニット」を担当する松田より、概要の説明がありました。
デジタルハリウッドの卒業生で「企業専属のクリエイターユニット」を組み、チームの力で企業の課題を解決するという新しいスキームの人材紹介サービスです。
デジタルハリウッド卒業後にフリーランサーとして活動したい方は、
安定的な仕事獲得のために登録することをおすすめしています。
今回登壇されている3名は全員ランサーユニットに登録していて、ここから安定的に仕事を受注されています。実際にランサーユニットを活用してどうなのか、登録クリエイターとしての本音をお聞きしました。
Q.ランサーユニットを使う理由は何ですか?
A.作業単価も企業の質も高くて安心できる!
栗原:
正直ランサーユニットを通じて受ける仕事は、他のクラウドソーシングサービスと比べて単価が全然違います。他社ですと、足元を見られて低い金額でオファーされることも少なくありません。ランサーユニットはクリエイターの活動を保護してくれる価格設定ですし、クライアントもきちんとされた方ばかりなので、本当におすすめです。
若旅:
報酬からエージェントへの紹介料を引かれることは当たり前だと思っていました。ランサーユニットはそれがなくて、最初は衝撃を受けましたね。
松田:
クリエイター育成機関のデジタルハリウッドとして運営しているサービスですから、「クリエイターファースト」という考え方が基本にあります。私たちが企業との間に入ってクリエイターの報酬の一部をいただくという仕組み自体が古いと考えていますし、そうした体質を変えていきたいという想いから生まれたのがランサーユニットです。
それを理解いただいた企業様とお取引をしていますから、金額の部分で揉めることはほぼありません。企業のフィルター機能を今後も強化していきますので、ぜひクリエイターの皆さんには安心して活用いただきたいです。
にしむら:
ランサーユニットにはすごくお世話になっています。おかげで生活が成り立ちますよね?
栗原:
そうですね。やりとりもスムーズですし、企業様から直接依頼されている錯覚に陥るほどです。かといって放置するのではなく、困っている時は相談に乗っていただくこともできて、とても助かっています。
松田:
ランサーユニットに登録いただいた方とは、ポートフォリオを拝見したり、悩んでいることがあったら話を聞いたりと、随時やりとりをしています。私たちとしては「卒業生を守りたい、サポートしたい」という気持ちがありますから。
6.参加者からの質問
Q.デザイン料金の決め方は?
A.時給を決めて作業時間から算出するのがおすすめ
若旅:
永遠の課題ですよね。私も勉強中です。
栗原:
私はクライアントの希望をまず聞きます。いくらくらいでお考えですか?と。先方の予算を越える額を提示しても無理ですし、まずは希望をお聞きした上で、できるかどうかを判断しています。
松田:
金額に関しては企業によってまちまちです。私がクリエイターにアドバイスしているのは「時給換算したときの自分の単価はいくらか」を決めるということです。たとえばバナー制作に2時間かかるとした時に、あなたの時給は何千円ならよいかを考えてみてください。
ランサーユニットのクリエイターの場合、平均的な時給としては3,000円から3,500円というケースが多いです。スキルは高い方は時給5,000円に設定することもありますし、経験が浅い方は2,000円で出す場合もありますが、平均するとそのくらいではないでしょうか。
Q.役立つ資格はありますか?
A.特になし
若旅:
カラーコーディネーターの資格を持っていますけど、実際は特に役に立ってないです。
栗原:
私も学芸員の資格を取りましたが、仕事には役に立っていません。やはりデザイナーの実力を証明するのは資格よりもポートフォリオです。
Q.デザイナーとして活躍するには、まず会社に所属するべき?
A.一度所属するのがスムーズ、でも結局はポートフォリオ次第
デジハリ・オンラインスクール事務局:
一番スムーズなのはどこかに所属して経験を積むことだと思います。とはいえデジハリ・オンラインスクール卒業後に基本的な制作はできますから、いきなり独立することも不可能ではありません。バナー制作など簡単な案件を受けながら少しずつ実績を積んでいく道もあります。
栗原:
会社員として働いていた時、働いたことがない人を採用することは正直あまりなかったです。個人的には会社に入った方が手っ取り早く、自分でポートフォリオを充実させていくのは“茨の道”と感じます。
若旅:
会社に所属してわかることも結構ありますから、いきなりフリーランサーになるというよりは数年でも制作会社で働いて実績を積むという方向が個人的には良いと思います。グラフィックデザインなど印刷物は特に、現場の経験を積まないとわからないことも多いので。
松田:
未経験者を求めている企業もありますよ。まずは未経験OKの案件に応募して、ポートフォリオを充実させていくことができれば、経験を持った上で転職や独立などの道も選べます。まずは動くことが大切です。動かないと何も始まりません。
にしむら:
不安に感じないのでしたら、いきなりフリーランサーになるのもありだと私は思います。以前に名刺デザインの依頼があって、実務経験がなかったものの「できますよ」と言って架空の作品をたくさん用意して提出したことがあります。量と質ともに良かったので、それは仕事につながりました。
ポートフォリオが良ければ、必ずしも所属の経験は必要ではないと思います。架空のものでよいので、いろいろなパターンの作品をたくさん載せておけば、その人に何ができるかわかります。やはりクリエイターにとってポートフォリオは何よりも大事ですね。
Q.ポートフォリオは質?それとも量?
A.質以上にバリエーションが求められることが多い
にしむら:
楽しい方で良いのではないでしょうか。一つのWebサイトのクオリティを高くするのが楽しいのであればそれは武器ですし、いろんなバージョンを作るのが楽しいと感じるならそれも良いでしょうし。
松田:
企業からすると、質以上にバリエーションを求めていることが多いと感じます。違う視点を持っていたり、引き出しが多かったりすると採用につながることが多いです。
Q.他のデザイナーと差別化して自分を選んでもらうためには?
A.オンリーワンの武器を持つこと、提案すること
松田:
正直スキルは皆さん似たり寄ったりの部分があります。だからこそ「あなたのオンリーワンは何ですか?」ということをクリエイターに問いかけるようにしています。
何か一つ自分の武器となるものを磨いている人は光ります。にしむらさんの場合ですとCGやイラストができるということは武器ですよね。
にしむら:
挿絵が必要な時にイラストレーターを通さなくてもできるので、確かに武器です。オンリーワンの見つけ方は、やっていて楽しいことにまず全部手を出してみてください。これだ!というものが見つかった時には、それをもっとやってみるのがいいと思います。
若旅:
私が意識しているのは、どんな時も必ずこちらから提案することです。「今まではデザインを一方的に作ってもらうだけでしたが、こんなに提案してくれる方がいるんですね!」とクライアントから言われました。
たとえデザインの受託であっても、もっと良くするためにはどうしたらいいのかを考えて、相手が思っている以上のものを提案することを心がけています。そうすることで「またこの人に相談したい」と思っていただくことができるので、どんな仕事においても大切にすべき考え方ではないでしょうか。
7.まとめ
卒業生3名の経験談と考え方を学ぶことができたトークイベント。Webデザインを学んだ後にフリーランサーになるまでの道のりを少しイメージすることはできましたか?
まとめると、まずは未経験OKの案件や知人の案件などで経験を少しずつ積んでいき、ポートフォリオを充実させていくことが大切だということです。
そこから継続的にお仕事を受けていくポイントとして、楽しみながら自分の“オンリーワン”を追求していくことや、収入の波に動じずに楽しんで過ごすマインド、自分から提案していくことの重要性などについて教えていただきました。
とはいえやはり正解は一つではなく、一人ひとりにとっての答えがあるはずです。皆さんならではの道のりで、ランサーユニットのサポートも活用しながらフリーランサーの夢に進んでいかれることを、デジハリ・オンラインスクールは応援しています。