人気アニメーション、プリキュア。日曜朝の人気作品として長い間愛されており、あなたも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
グッズ販売や映画化など幅広くメディア展開されており、子供たちが喜ぶ内容なだけでなく、本格的な戦闘シーンや細やかな設定など、子供と一緒に鑑賞する大人も惹き込まれる内容となっております。
長い歴史を持つプリキュアですが、3DCG技術を取り入れたことから映像表現が大幅に進化してきました。本稿ではプリキュアの3DCGの魅力とこれまでの歴史について解説していきます。
プリキュアシリーズにおけるCG・3DCGの歴史と現在
プリキュアシリーズは、ごく普通の少女たちが妖精の力を借りてプリキュアという伝説の魔法戦士に変身し、悪と戦う作品。2004年の「ふたりはプリキュア」から歴史が始まっており、約20年もの長い歴史を持つ作品です。作品ごとのコンセプトやバリエーションもさまざまですが、基本的には「プリキュアとなった少女たちが世界を救う」というコンセプトの元で展開されています。
プリキュアが3DCG技術の活用に舵をきったのは通算6作品目であり、4代目プリキュアである「フレッシュプリキュア!」がきっかけでした。制作会社である東映アニメーションがプリキュアに3DCG技術を使用した背景にはどのような理由があったのでしょうか。
フレッシュプリキュア!から始まった「3DCG」技術の活用
フレッシュプリキュア!から3DCG技術が使用されるようになった背景として、「ターゲット層の拡大」が一つあったのではないかと思われます。
フレッシュプリキュア!の前作である「Yes! プリキュア」シリーズを経て、制作陣はシリーズ化によって元々ターゲットとしていた女児たちが幼稚園や保育園を卒業したことで、プリキュアを離れてドラマ番組などを見るようになってしまう傾向があることを知ったそうです。そこで、より幅広いターゲットに見てもらえるように、それまでの作品よりもキャラクターの頭身を増やしたり、ストーリー性をより強化したり、ターゲットである女の子たちが興味のあるものを作品に取り入れることを意識したそうです。
そうした背景もあって誕生したのが、エンディングでのキャラクターによるダンスと歌唱の描写です。本編では2Dのキャラクターたちが、リアルな3DCGとして楽しそうに踊る姿はファンのみならず業界でも大きな話題を呼びました。
セルルックで「かわいく」「かっこいく」3DCGを
フレッシュプリキュア!が放映された2009年ごろは3DCG技術が今ほど使用されておらず、3DCGへの抵抗感がある視聴者も多くいました。女児をターゲットとした作品はキャラクターの目が大きいことが多く、2Dの描写をそのまま3Dに持ってくると、のっぺりとした極端に目が大きなキャラクターが実在する人間のように動くという違和感ある描写になるのでは?という業界人や視聴者の懸念点もあったそうです。
そこで取り入れられた技術が「セルルック」という手書き風3DCGの技術。当時まだ広く使われてはいなかったものの、セルルック技術をいち早く導入したことで、フレッシュプリキュア!は3DCGのTVアニメーションの先駆けとなりました。
2Dと3Dの間のそのキャラクターらしさを造形や動作の細部までこだわり抜いた結果、印象的で違和感のない作品となりました。
アニメとリアルの融合「セミリアル」でさらにかわいさアップ
プロデューサーによると、フレッシュプリキュア!の3DCGは横顔描写などでまだまだ伸びしろがあったようで、2012年放映の「スマイルプリキュア!」ではよりリアリティを追究した表現になったそうです。キャラクターの陰影にこだわったり、横顔の違和感を解消したり、質感などもより伝わるようになりました。
そして、リアリティを追究するだけでなく、アニメならではの華やかな演出を加えたり、視点変更を加えることで、リアルとアニメのいいとこどりの「セミリアル」な描写が生まれ、よりキャラクターの魅力を際立てる映像が完成しました。
スマイルプリキュア!をきっかけにますますプリキュアの3DCG技術は磨きがかかっていきます。
プリキュアは「アイドル系アニメ」にも3DCGの影響を与える存在に
プリキュアの3DCG技術による成功は、他のアイドル系アニメの3DCGにも大きな影響を与えるようになります。たとえば、スクールアイドルグループが主人公の「ラブライブ!」や、カードゲームを原案とした「アイカツ!」、「プリパラ」などの作品でもプリキュアに負けじと積極的にCG技術が取り入れられるようになり、各制作会社での奮闘が見られるようになりました。
各社の独自のこだわりによって、アイドル系アニメの3DCG描写は定番化し、フレッシュプリキュア!の時代よりかなりレベルアップした表現となっています。
直近では「ヒーリングっど プリキュア」などでもCG技術を活用
最新シリーズ「ヒーリングっど プリキュア」においても、3DCG技術が活用されています。前述したフレッシュプリキュア!の映像と比較して、よりなめらかかつ、アニメならではの表現が取り入れられていることが見て取れます。
3DCGキャラクターの作成工程
ヒーリングっど プリキュアでは、「Lowモデル」という大まかなキャラクター造形を作成したあとに、「Highモデル」というより細部を作成し、色合いを調整したモデルを作成するフローで進行したようです。
モデルの外見が完成した後、実際にボーン(骨格)をキャラクターに加えて、モデルを完成。その後、エンディングテーマに合わせたアニメーションの制作へと進行しました。
エンディングアニメーションにおけるCG処理の作業工程
エンディングアニメーションにおいては、まずは絵コンテを制作し、それをもとに最大限にキャラクターのかわいさが伝わるような形でアニメーションの制作が進んだようです。
キャラクターの動きについてはモーションキャプチャシステムを使用して実際のダンサーの動きを取り入れて収録。動きや表情のデータを3Dキャラクターに反映させたり、カメラワークをリアリティがあるものを採用してみたり、細部の服やキャラクターの動きを調整したり、さまざまな工程を経てエンディングにおけるアニメーションが完成となりました。
プリキュアは映画でも3DCGを使用
プリキュアは、映画版作品も定期的に公開されています。映画版においても3DCG技術は健在で、予算と時間のある映画版ならではの高クオリティの表現が追究されています。
2018年公開の「映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」では、歴代のプリキュアたちが大集合し、活躍するという内容なのですが、2Dアニメーション時代の作品を含む過去作品のプリキュアたちを当時最新の3DCG技術を取り入れて表現したことから大きな話題となりました。
キャラクターの表情がよりわかりやすくなったり、動きに迫力が出たり、背景にいるキャラクターにも表情や動きがわかるようになっていたりと、お祭り作品を技術の面からも盛り上げるスタッフの気合が伝わる内容となっていました。
これから3DCGクリエイターを目指したい、アニメの仕事をしてみたい!という方は、ぜひ映画版のプリキュアもチェックしてみてください。
CGの作り方を基礎から学ぶなら”デジハリ・オンライン”
ここまでプリキュアの3DCGについてまとめてきました。こちらの記事を読んでいる方の中には、プリキュアのような3DCGを活用したアニメーションを作ってみたい!という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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まとめ
国民的作品であるプリキュアにおける3DCG技術の歴史について本稿ではまとめてきました。今では当たり前になった3DCGのダンスも、当初はかなりのチャレンジだったことが伺えます。3DCG技術を学んで、取り入れていくのは決して簡単なことではありませんが、業界に歴史を刻み、視聴者の心を動かす映像ためには挑戦がつきものです。これから3DCG技術を学び、未来のアニメーターを目指すあなたを応援しております!