3DCG制作の、最終工程にあたる3Dレンタリング。3Dレンダリングにはトゥーンレンダリングやラジオシティ法などさまざまな方式があり、どの方式を選ぶかによってCGの仕上がりが変わってきます。今回は、3Dレンダリング方式の種類についてまとめてみました。
3Dレンダリングとは
「3Dレンダリング(3D rendering)」とは、物体の形状や視点、質感、光源などが記述されたデータを、コンピュータプログラムを使って画像や映像、音声などとして描写・生成する作業のことです。
レンダリングを行うプログラムを「レンダラ―(renderer)」や「レンダリングエンジン(rendering engine)」と呼びます。
レイトレーシング(Ray tracing)
1980年にTurner Whitted氏により提案された「レイトレーシング」は、現代のCG制作に欠かせないレンダリング手法です。光線追跡法とも呼ばれ、比較的実装が容易であるというメリットがあります。
人が物を見る場合、光源から発せられた光が物体に反射し、その光が人の目に届くというプロセスをたどります。一方、レイトレーシングでは逆のプロセスをたどります。つまり、人の視点から光線(ray)を追跡する(trace)プロセスを踏む手法がレイトレーシングです。
1画素ごとに光線の経路を計算するため、画質が高いという特徴があります。
トゥーンレンダリング(Toon rendering)
リアルさを求められることが多いCGですが、あえて2次元の手描きイラストやアニメなどのテイストを再現しようする手法が、「トゥーンレンダリング」です。
トゥーンレンダリングはアニメやゲームの中でよく使われ、「セルシェーディング(cel shading)」と呼ばれることもあります。
現実感をなくすことで、キャラクターを親しみやすく表現できることが特徴です。
ラジオシティ法(Radiosity method)
ラジオシティ法は、「間接光(柔らかい光の回り込み)」などを表現する手法です。
古典的レイトレーシングでは光源から発せられて直接観察者に届く光だけを考えていました。しかし、ラジオシティ法では光源から直接届く光だけではなく、物体に反射して生じる間接光を表現できるため、よりリアルな描写が可能です。
ただし、複雑な方程式を解く必要があるため、計算に時間がかかるというデメリットもあります。計算量を増やしたくないときは、レイトレーシング法を使いましょう。
フォトンマッピング(Photon mapping)
フォトンマッピングはHenrik Wann Jensen氏によって1996年に提案された手法です。フォトンマッピング法は、広い意味でのレイトレーシングの手法です。
先ほど述べたように、間接光を考慮しない古典的レイトレーシングには、写実的な表現ができないという弱点がありました。間接光も考慮してレイトレーシングしようとすると、あらゆる光線の経路を求める必要があるため、計算に時間がかかります。
モンテカルロ・サンプリングにより計算量を抑える「モンテカルロ・レイトレーシング(Monte Carlo ray tracing)」という手法もありますが、この手法ではコースティクス(集光模様)を再現することが困難です。
しかし、フォトンマッピングであれば、コースティクスの生成が可能です。
フォトンマッピングでは、第1段階で光源から光の粒子「フォトン」を飛ばし、フォトンが物体と衝突した地点のフォトンマップを生成します。そして、第2段階で視点から光線を飛ばし、フォトンマップの情報をもとにレンダリングを行うのです。
まとめ
レンダリングは、コンピュータに最も負荷がかかる工程です。CPU処理能力の向上により、レンダリング時間は昔よりも短くなっていますが、今でも相応の時間がかかることに変わりはありません。
レンダリング方式を選択する際は、何を優先したいのかを明確にすることが重要です。計算時間よりも画質を優先するのか、設定した計算時間内にできる限り高い画質を求めるのか、自分のスタイルや要求されるものを見極めましょう。