デザインを構成する重要な要素の1つであるタイポグラフィ(typography)。本稿では、タイポグラフィとはなんなのか、タイポグラフィの基本的なルール、タイポグラフィを学ぶ方法などをまとめてお届けします。
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タイポグラフィとは?
「タイポグラフィ」と一言でいっても、人やシチュエーションによって若干ニュアンスが異なる場合があります。タイポグラフィの定義は大きく分けて以下の2つに分類されることが多いです。
情報として文字を読みやすく、美しく配置すること
もともと、タイポグラフィは活版印刷において文字の体裁を整える技術という意味で使用されている言葉でした。しかし、時代の変化に伴い、デジタル化が進んだ今では、印刷物だけでなく、文字に関わるもの全般を指す言葉として使用されています。
文字には情報が含まれており、人はそこから意味を読み取ります。ですから、いかに読み取りやすく文字を形作り、配置させるかは非常に重要です。
文字の大きさやフォント、行間など、最適なものを選び、配置する。それによって読み手に内容がスッと入るような文章を構成する。これがタイポグラフィの基本的な意味です。
文字をデザインとして取り入れる
雑誌やパンフレットなどの文章は、そこから読んでもらって内容を理解してもらうことに重きを置いていますが、中には、文字をいちデザインの表現方法として使用するパターンもあります。
これもタイポグラフィと呼ばれており、「読み物」というより「イラスト」に近い領域といえるかもしれません。
このように、「タイポグラフィ」は異なる2つのニュアンスを含む言葉であることを理解しておきましょう。
Webと印刷したタイポグラフィはどう違うの?
主な違いとしては2点あります。
1つ目に、カラーモードの違いです。印刷物では、「CMYK」は、Cyan(シアン)/Magenta(マゼンタ)/Yellow(イエロー)/KeyPlate(ブラック・スミ)の4色を混ぜ合わせて色を表します。
一方で、Webでは「RGB」、Red(レッド)/Green(グリーン)/Blue(ブルー)という光の三原色から色を表しています。RGBの方がCMYKより幅広い色の表現が可能といわれており、印刷物では特色を使わないと表現できないような色合いも、Webでは液晶画面に簡単に表現できます。
印刷をする際は、この印刷物とWebとの色合いの違いについて気をつけるようにしましょう。
2つ目に、解像度の違いです。Webの場合、解像度が低くてもある程度きれいな状態で液晶に画像を表示できますが、印刷物の場合、解像度が低い場合はガサガサな画像が印刷されてしまいます。画像の解像度には気をつけるようにしましょう。
タイポグラフィのルール
タイポグラフィにおいて、より伝わりやすいようにするために抑えておきたい基本的なルールをまとめていきます。
フォントのサイズや種類は揃える
基本ではありますが、フォントのサイズやフォントの種類が異なっていると文章がガタガタになっている印象を受けるため、揃えるようにしましょう。
フォントの種類を複数使う場合も、あまりにも多くの種類を使いすぎると、怪文書のような少し怖い印象を受けるので、できるだけ2,3種類ほどにとどめておきましょう。
見出しやタイトル箇所は文字サイズを大きくする
文章のタイトルや見出し、小見出しなどの重要箇所は、文字サイズを大きくすることで伝えたいメッセージや各箇所の概要についてをわかりやすく伝えることができます。
行間を詰めすぎないようにする
文章が複数の行にまたがる場合は、行間の詰めすぎには注意しましょう。一般的に150〜190%が読みやすい行間と言われています。どうしてもコンパクトにおさめたい場合や、デザインとして、あえて行間を詰めたデザインにしたい場合は調整することもあるかもしれませんが、基本的にはある程度開いていたほうが読みやすいです。
文字同士の間隔を詰めすぎないようにする
前述した行間だけでなく、文字同士の間隔にも気をつけましょう。同じフォントであっても文字間の余白が文字によって異なるので細かく調整するようにしましょう。
文字を適度に強調する
「目が滑る」という言葉がありますが、同じフォント、同じサイズの文字がひたすら続くと、どうしても文章の中身が頭に入ってこなくなってしまうことがあります。そうならないように、文章に緩急をつけるような工夫が必要です。
文字を太字にしたり、「」や””などを使用することで、伝えたい言葉やフレーズを強調できます。これによって、内容が伝わりやすくもなりますし、文章に緩急がついて読みやすくなります。強調も、たくさんしすぎてしまうと、伝えたい箇所がどこなのかわからない文章になってしまうので、量には気をつけましょう。
強調しない箇所は色を薄くする、文字サイズを小さくする
中には、文章の中で強調しないほうがいい箇所もあるでしょう。たとえば、画像のキャプション部分で一言重要でない補足を入れる場合などです。
その場合は、強調とは真逆の、目立たないような工夫をするとよいでしょう。文字色を少し目立ちにくいグレーにする、文字サイズを小さくするなどです。このようにあえて目立ちにくい文字にすることで、強調したい箇所がより強調されやすくなります。
テキストや背景に色を使いすぎない
文字の強調にもつながりますが、適切な量で文字や背景色でカラーを使用すると、文章が読みやすくなります。
一方で、色も3色以上使うようになると、必要以上にカラフルな印象を与えてしまい、逆に文章が読みにくくなってしまいます。
また、背景色がホワイトにも関わらず、強調する色がホワイトだと文章が読めません。このように、色の特徴をふまえた上で、どのような色でどんな文章を強調するかのルールを決めておくとよいでしょう。
文字色は基本的には黒にする
文字色は基本的には可読性が高い黒色にするのがオススメです。もちろん背景色にもよりますが、黄色は視認性が低い、赤は強調箇所として使用するのはいいが、全体を赤文字にしてしまうとどこかショッキングな印象を与える、といったようにそれぞれの色の特徴があります。
イメージにあったフォントを選択する
テレビ番組のテロップをイメージしてもらうとわかりやすいと思うのですが、バラエティ番組で怒っている人の声をテロップで表示するときは怒っている雰囲気のフォント、感動的なVTRではしっとりとした雰囲気のフォント、ホラー番組ではどこかおどろおどろしい雰囲気のフォントが使われていますよね。
このように、その文章を掲載する媒体の特性やシチュエーションを考えたうえでマッチしたフォントを選択するようにしましょう。
読みやすいフォントを選択する
特に文章ものの場合はフォントは内容が頭に入ってきやすい、可読性の高いフォントを選ぶようにしましょう。一方で、タイポグラフィをイラストのように使用したい場合は、あえて多少読みにくくても、雰囲気が伝わるような独特なフォントを使うというのも手かもしれません。
行を揃える
ある行は「中央寄せ」、ある行は「左寄せ」、また別の行は「右寄せ」のように、文章の行がバラバラだと読みにくくなってしまいます。ですから、基本的に文章の行は揃えるようにしましょう。
ある程度の文字量がある文章であれば、左寄せがオススメです。
適切な改行をする
読み物など、文章量が多い場合は、適切な箇所で改行を入れるようにしましょう。ひたすら何行も文章が続くと、文章にメリハリがなく、読みにくくなってしまいます。
Webであれば3〜5行ほど文章が続いたら改行を挟むなど、読みやすくなるような文章の見せ方を覚えておきましょう。
このようにタイポグラフィには基本的な抑えておくといいルールがあります。もちろん、場合によってはここからはみ出して、独自の方法でアレンジしたほうがいいこともありますが、伝わりやすいタイポグラフィを意識する上でこちらに記した内容は理解しておくとよいでしょう。
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タイポグラフィを作るポイントとは?
タイポグラフィを作る上でのポイントは無数にありますが、少しだけ具体例をまとめます。
写真上に文字を乗せる
まるで映画のポスターのように、写真の上に文字を乗せることでおしゃれな表現ができます。背景色と文字色がかぶると視認性が悪くなるので、かぶらないように気をつけましょう。
イメージにマッチした色合いを選ぶ
たとえば、こちらのアースデイをテーマにしたタイポグラフィの場合、背景のグリーンにマッチした土色の文字色を選んでいます。このように、伝えたいイメージを構成する要素として、色選びは非常に重要です。
手書き風文字でどこか温かい印象を
手書き風のフォントは温かい印象を与えます。
壁や地面に文字を乗せることでストリートアート風に
壁や地面にペンキやスプレー、マジックで書いたようにすることで、ストリートアート風の見せ方ができるようになります。
タイポグラフィを学ぶ方法
ここまでタイポグラフィの基本的なポイントをまとめてきましたが、実際に本格的にタイポグラフィの技術を習得したい場合はどのような方法があるのかをまとめてみます。
大きくわけて
・スクールに通う
・独学
の2つの方法があります。
スクールに通う
1つ目の方法はスクールに通うこと。スクールのいい点はなんといっても、プロフェッショナルから直接フィードバックを受けられることです。
デザインは抽象度が高い領域で、いかに効率的にフィードバックを受けながらより良い制作をしていくかが求められます。だからこそ、独学では難しい、他者の視点から見た感想や、プロ視点でのアドバイスをたくさん受けられるのはスキルの向上に多いに役立つでしょう。
また、一緒に学ぶ仲間ができるのも、スクールならではの特徴です。やはり、新しいことを始めるときは挫折をしないような仕組みづくりが重要です。一人で学ぶと、どうしても周りの誘惑や仕事や学校の忙しさを理由に怠けてしまうことも多いです。だからこそ、一緒に切磋琢磨できるスクールの仲間がいることで、最後まで学び抜きやすくなります。
もちろん、スクールの場合、初期費用は独学よりは高くつきますが、その分、デザイナーとしてスキルアップしたことで就職や転職、新しい案件の獲得などにつながれば元を取れるようになるので、本気でスキルを習得したい人ほどスクールが向いているといえるかもしれません。
最近では、地方在住の人や育児中の方でも学びやすいような、オンラインスクールも充実してきています。オンラインであれば、基本的に好きな場所で好きなタイミングで学習できるので、スキマ時間に効率的に勉強したい方は検討してみるといいでしょう。
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本などで独学する
独学の場合、教本を買って、それをもとにコツコツと勉強する方法が一般的です。独学の場合、自分の好きなタイミングで学習できるのがメリットですが、そのぶん、自分の学習ペースによってスキル習得が左右されるので、自分を律して学習できる人じゃないとついつい後回しになってしまい、最終的に挫折してしまうリスクがあります。
ダイエットをしたい人が、とりあえずランニングを始めたものの、長続きせずにやめてしまうのと同じですね。だからこそ、自己学習をやり抜く自信がない方こそスクールがオススメです。
中には、友達のデザイナーに教わろう!という方もいるかもしれませんが、デザインやタイポグラフィを個人が教えるのはなかなか体力が要りますし、難易度も高いです。はじめはよくても、5時間、10時間と教えるうちに教える側としても少しずつ疲れてしまうことも考えられます。それでも教えてくれるような熱心な方がいるならいいですが、難しそうであれば専門のスクールで習ったほうがよいでしょう。
また、インターン生としてどこかの企業やデザイン事務所に入り、そこでタイポグラフィを学べばいいのでは?という方もいるかもしれませんが、なかなか未経験のデザイナーのインターンを募集していることは多くありません。また、前述したように、デザイン領域の指導はなかなか難易度が高く、工数がかかるので、企業内で手厚い教育を受けるのは簡単ではないでしょう。そうであれば、基本となるスキルをスクールである程度習得した後の選択肢として企業インターンを探したほうがよいでしょう。
独学は始めやすく、やめやすい方法です。ですから、どうしても初期費用をおさえたい!という方や、自分自身で最後までしっかり学習できるという自信がある方にはマッチした方法かもしれませんが、体系的にデザインを学んで効率的に学びたい!という方にはスクールの方が合っているといえます。
まとめ
タイポグラフィの基本についてまとめました。タイポグラフィはデザインには欠かせない基本でありながらも、かなり奥深い世界になります。だからこそ、習得したときに基本的なデザインスキルの底上げにつながるともいえるでしょう。
これからタイポグラフィを学びたいあなたを応援しています!