ゲームや映画やアニメ、映像の世界を中心に、CGの技術は欠かせないものとなりました。
高いクオリティのCG表現には、裏側にクリエイターの姿があります。今回の記事では、CGクリエイターの仕事について解説します。これからCG業界に挑戦したい方は参考にしてみてください。
そもそもCGクリエイターとは?
はじめに、CGクリエイターとはどのような仕事なのかを解説します。
CGクリエイターとは、Mayaや3ds Maxのような専用のソフトを用いてCG(コンピュータグラフィックス)を制作する仕事です。リアルなCGを駆使することで、映像の世界だけでなく多種多様な業界において、最近はCG技術が注目されています。
CGデザイナーとの違い
CGクリエイターとCGデザイナー、似たような印象を持つ方も多そうな両職種ですが、どのような違いがあるのでしょうか?
CGクリエイターはCG制作に携わる人全般を指す広い言葉です。そして、制作の中でも「デザイン」領域に携わる人をCGデザイナーということが多いです。
しかし、CGクリエイターもCGデザイナーも明確な定義はなく、同じようなニュアンスで使われることが多い言葉でもあります。
CGデザイナーとは?仕事内容や年収、必要スキル、資格などをまとめてみた
CGクリエイターの仕事内容とは?
「CGクリエイター」と一言でいっても、工程に分けていくつかの仕事に分類されるので、どのような仕事があるのか紹介します。
大手の映像制作会社ではより細かく工程ごとに担当がいますが、小規模の会社やフリーランスの場合は複数の工程を同じ人がまとめて担当することが多いです。
- モデラー:CGのモデルを作る仕事
- アニメーター:CGモデルに動きをつける仕事
- リガー:キャラクターに骨(ボーン)を入れて、リアルな動きをつける仕事
- エフェクトアーティスト:雷や煙や炎などの特殊効果を加える仕事
- コンポジター:画像や映像をデータと合成して整える仕事
モデラー
モデラーは3D空間上にキャラクターや建物、小物などの「形」を作り出す専門家です。
2Dのコンセプトアートやラフスケッチを元に、3Dソフトウェアを使って立体的なモデルを制作します。人物や生物のような有機的なモデルから、機械や建築物のような無機質なモデルまで、様々な対象を3D化する技術が求められます。
モデラーの仕事は作品の基盤となる重要な工程であり、後工程のリギングやアニメーションのしやすさも考慮した設計が必要です。特にキャラクターモデリングでは、表情の動きや体の変形を想定した作りが重要となります。
アニメーター
アニメーターは作成された3Dモデルに動きを付ける役割を担います。キャラクターの歩行や走行、表情の変化、物理シミュレーションなど、リアルな動きや感情表現を作り出します。
アニメーターには物理法則や生物の動きに関する深い理解が必要で、わずかな動きの違いで観る人が受ける印象が大きく変わるため、細部へのこだわりが求められます。
実写映像を参考にしたり、自分自身の動きを観察したりすることも多く、ときには鏡の前で演技をしながら自然な動きを研究することもあります。日常生活から観察眼を鍛える必要がある仕事です。
リガー
リガーはアニメーションを付けるための「骨組み」(リグ)を3Dモデルに設定する専門家です。
キャラクターの関節や筋肉の動きが自然に見えるよう、コントローラーやボーン(骨)を配置し、適切な変形設定を行います。複雑なキャラクターのリギングでは、顔の表情や服の揺れ、髪の動きなど、細部まで考慮した設計が必要です。
優れたリグは、アニメーターが効率的に作業できるだけでなく、自然で魅力的な動きを実現する基盤となります。テクニカルな知識と細部までこだわりを持った芸術的センスの両方が求められる職種です。
エフェクトアーティスト
エフェクトアーティストは、爆発、煙、火、水、魔法など、様々な特殊効果を作り出す専門家です。
物理シミュレーションや粒子システムを駆使して、リアルかつ印象的なビジュアルエフェクトを制作します。自然現象を正確に再現するための物理学の知識と、視覚的に魅力的に見せるための芸術的センスの両方が必要です。
エフェクトの規模や複雑さによっては、レンダリング時間や処理負荷を考慮した最適化技術も重要となります。映画やゲームの迫力あるシーンを演出する上で欠かせない役割を担っています。映像への没入感を生む仕事ともいえるでしょう。
コンポジター
コンポジターは、様々な要素(3DCG、実写映像、エフェクト、背景など)を合成して最終的な映像を作り上げる専門家です。
色調補正、ライティング調整、マスキングなどの技術を駆使して、違和感のない一体感のある映像を制作します。コンポジターの技術によって、CGと実写の境界線を感じさせない自然な合成や、全体的な映像の雰囲気づくりが可能になります。
映像制作の最終段階を担当することが多く、作品全体のビジュアルクオリティを大きく左右する重要な役割です。
求められるスキル・知識
CGクリエイターとして活躍するためには、専門的なスキルや知識が必要です。技術の進化が速い分野ですので、常に学び続ける姿勢も重要です。
3Dソフトウェアの操作技術
CGクリエイターにとって最も基本的かつ重要なスキルが、3Dソフトウェアを使用する技術です。Maya、3ds Max、Blender、Cinema 4D、ZBrushなどの業界標準ソフトを使いこなせることが求められます。
各ソフトにはそれぞれ特徴や得意分野があり、案件や制作現場によって使用するソフトが異なることもあるため、複数のソフトに対応できると優位に立てます。
特に基本的な操作だけでなく、作業の効率化やクオリティ向上につながる応用技術やショートカットの活用も重要です。また、プラグインや拡張機能の知識も作業の幅を広げるために役立ちます。
またAdobe IllustratorやAdobe Photoshopなどの基本的なAdobe系ソフトを使用する機会も多いです。
美術・デザインの基礎知識
技術的なスキルだけでなく、美術やデザインの基礎知識もCGクリエイターには不可欠です。色彩理論、構図、遠近法、光と影の表現、解剖学的知識などの基本的な美術の原則を理解していることで、技術的に正確なだけでなく、視覚的に魅力的な作品を作り出すことができます。
特にキャラクターデザインでは人体の比率や筋肉の付き方、表情の作り方などの知識が重要ですし、環境デザインでは建築や自然物の構造理解が作品のリアリティを高めます。
これらの知識は、どれだけ高度なCGソフトを使いこなせても代替できない創造性の源となります。
物理法則の理解
リアルで説得力のあるCG作品を作るためには、物理法則の基本的な理解が必要です。光の反射や屈折、物体の重さや質感、流体や布の動き、重力や慣性の影響など、現実世界の物理現象を理解し再現できることが求められます。
例えば、金属と布では光の反射の仕方が全く異なりますし、重い物体と軽い物体では落下時の速度や衝撃の与え方が変わります。
特にアニメーションやシミュレーションを扱う場合、こうした物理法則を意識することで、視聴者に違和感を与えない自然な動きや現象を表現できます。ときには意図的に物理法則を誇張したり変更したりすることもありますが、それも基本を理解した上での創造的な選択となります。
プロジェクト管理能力
大規模なCGプロジェクトでは、多くの人が関わり複雑な工程を経て完成に至ります。そのため、効率的な作業進行や他のクリエイターとの協業のためのプロジェクト管理能力も重要です。
細かいところではファイル命名規則の遵守、バージョン管理、作業の優先順位付け、納期管理といった基本的なスキルから、チームでの意思疎通や問題解決能力まで、プロジェクトをスムーズに進行させるための能力が求められます。
特にフリーランスとして活動する場合は、自己管理能力や顧客とのコミュニケーション能力も成功の鍵となります。クライアントのニーズを正確に理解し、適切なフィードバックを受け入れながら作品の質を高められるCGクリエイターは、業界で高く評価されます。
CGクリエイターのやりがいとは?
CGクリエイターのやりがいは、自分の作ったCG表現が世の中に受け入れられた時に感じる方が多いでしょう。あなたも、CG映画やゲームをプレイして、「ここまでリアルなのか!」と驚いたことがあるのではないでしょうか。
CGの仕事は長時間、高い集中力を求められる仕事で、決してかんたんな仕事ではありません。しかし、トップクリエイターの作るCG作品は、誰かの人生を動かすくらいの大きなインパクトを与えるパワーを持っています。また、CGの仕事はチームで作品をつくっていくのも醍醐味といえるでしょう。一人では難しいような映像表現をチームで追求し、成果につながった時の喜びは代え難いものです。
CGクリエイターの年収とは?どのくらい稼げるの?
続いて、CGクリエイターの気になる年収はどのくらいなのでしょうか。国内のCGクリエイターの年収に特化した調査などはないので、「だいたいこのくらい」といった記述にはなりますが、まとめていきます。
20代
300万〜500万
大前提、会社の規模や役職などによって大きく変わりますが、下積み時代といわれることが多い20代の年収はこれくらいです。特に20代は、夜遅くまでの残業が多かったり、本業に関わらないようなアシスタント的業務を任されたりすることが多く、長時間労働になりがちです。そのため、1,2年ほどで退職する人も少なくないです。
30代
400~700万
続いて、30代です。30代になると、クリエイターとして頭角を現す人が増え、管理職として働く人が増えるため、年収レンジは高くなります。外資系企業やフリーランスとして独立する人はより高い収入を得られるかもしれません。一方で、30代になり家族ができることで、働き方が変わったり、転職する人も生まれてきます。
40代以上
400万〜1000万
もちろん一概にはいえませんが、40代以上でCGクリエイターとしてキャリアを積んでくると、管理職や独立の道を歩む人が増えてきます。独立すると、大きく収入アップが期待できますが、その分、自分で案件獲得をしなければならないなどより広い範囲の仕事が求められます。また、ハードワークが難しくなるので、体力と働き方と年収のバランスが問われるでしょう。
CGクリエイターに向いている人とは?
CGクリエイターに向いている人の特徴をまとめていきます。
- 黙々と仕事に集中できる人
- 精神力と体力を持ったタフな人
- 強いこだわりを持つ人
- 対人コミュニケーションが得意な人
- オタク気質で最新のCG技術に興味を持ち続けられる人
- 映画やゲームが大好きな人
ここにまとめているのは一例ではありますが、総じて、「こだわりを持ったガッツのある人」といえるでしょう。
CGクリエイターになるには?
続いて、CGクリエイターになるために必要な要素についてまとめていきます。
必要な資格・試験
CGクリエイターになるための資格や試験は必要ありません。CGクリエイターとしてのキャリアを積んで、そこからCGクリエイターを名乗ったらCGクリエイターになれます。
しかし、CGクリエイターとして対外的に自分の技術を証明したり、技術習得を目的としたりした資格・試験は存在しています。
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CGクリエーター検定
- CGエンジニア検定
の2つは、特に有名な検定です。すでにCGクリエイターとして働いている人も、これからCG業界に挑戦したい方もチェックしてみるとよいでしょう。
「CGクリエイター検定」「CGエンジニア検定」の難易度と合格率
CGクリエイターになるための勉強方法
CGクリエイターになるには、実際にどのような勉強方法があるのでしょうか。主な方法をまとめていきます。
1.専門学校や大学で勉強
専門学校や大学のCGや映像技術を学べる学部で学ぶのは王道のルートです。大学の場合は、より知識を幅広く学べて、専門学校の場合は具体的な技術習得に力を入れていることが多いです。
働いたり、学校に通ったりしながら、専門学校や大学に通う人も多くいます。
やはり、スクールで学ぶことのメリットは一流のプロフェッショナルから、たくさんフィードバックを受けられる点です。CGという、一見抽象度が高い領域において、プロからフィードバックをどれだけ受けたかは、技術力向上に直結します。
また、スクールに通うことで、一緒に学ぶ仲間ができるのも大きなメリットといえるでしょう。勉強をする上でのモチベーションにつながったり、あとあと一緒に仕事をするきっかけになったりするかもしれません。また、就職や転職の支援サポートを受けられるのも強みです。スクールならではのパイプを活かして、卒業後にすぐに就職できることもあります。
もちろん、スクールの場合は費用はかかってしまいますが、将来に投資して本気でCGクリエイターを目指す人にはおすすめの選択といえるでしょう。
2.独学で勉強
スクールに費用を払うのはちょっと…という方や、自分のペースで勉強していきたい人は独学を選択肢に入れてもよいでしょう。教本を購入して、CG系ソフトを購入し、自分でひたすら作品をつくり続けることでレベルアップを目指す流れです。
独学は、教本を元に自分でカリキュラムを作って、着実に学習計画を立てて学んでいける人にはおすすめですが、飽き性な人や計画的に学習するのが苦手な人にはあまりおすすめできません。趣味の範囲でCGを勉強するぶんには問題ありませんが、本気でCGクリエイターとしてご飯を食べていくぞ!という方はスクールのほうがよいかもしれません。
やはり、学習していく上で「最後まで学びぬく」というのが非常に重要になります。学んでその先にキャリアを広げていきたいのであればなおさらです。
また、個人制作のCGの世界で求められることと、商業的なCG制作の現場で求められる表現は大きく異なります。独学の場合、どうしても自己流のクセがついてしまったり、フィードバックを受けにくかったりすることで、成長速度が少し遅くなってしまう場面もあるかもしれません。
スクールの講師は、プロフェッショナルでありつつ、「教える」ことに強みを持つ人達というのも特徴です。現場をわかる人たちから、フィードバックを受けつつ、わかりやすく学んでいきたい!という方はスクールを一度検討してみるとよいでしょう。
3.実際に制作現場で仕事をしながら勉強
CGクリエイターを志す人の中には、実際に制作現場に飛び込んで、働きながら勉強してスキルアップしていきたい!という方もいるでしょう。
中には、未経験でCG制作職を募集している会社も存在しているので、そういった会社に入社して働くのも一つでしょう。しかし、未経験で専門職であるCGクリエイターを募集している会社は、未経験を採用しなくてはならない何かしらの事情があるので、望むような労働条件でない可能性もあります。
また、働きながら学べる!と聞けば効率的に感じられるところもあるかもしれませんが、CG業界のハードな世界で、ゼロから学びつつ働いていくのは決してかんたんなことではありません。休みの日や仕事の後での継続学習が求められるでしょう。
別のキャリアとして、CGの制作会社にCGクリエイター職ではないポジションで入社して、その中で少しずつキャリアチェンジをしてCG制作に携わるようになり、クリエイターとしての道を歩むという方法もあります。これは、文字にすると一見簡単そうではありますが、社内の調整が必要ですし、いずれにせよ未経験スタートにはなるので、ある程度のパワーがかかることを知っておきましょう。
CGクリエイターの就職方法とキャリアパスとは?
続いて、CGクリエイターとして就職するための方法や、どのようなキャリアパスをたどるかをまとめていきます。
就職方法
就職方法としては、以下のようなパターンがあります。
スクールや独学で技術を身に着けてから就職・転職する
CGの制作会社や事業会社のCG部門で働く場合、基本的にある程度の技術を持った経験者採用が主流となります。ある程度、ポートフォリオを組めるくらいの作品数を重ねて、自分の技術を証明できる段階でようやく就職できます。
スクールに通っていたら、スクールからの就職支援によっておすすめの会社を紹介してもらうのも一つです。独学の場合は、就職系のサイトや場合によっては転職エージェントなどを活用して就職活動をするのが主流です。
いずれにせよ、就職する上で、一定の技術の証明は必要になるので、基本的な技術のレベルアップは欠かせません。技術習得したての場合は、そうかんたんには人気企業には入りにくいと心しておきましょう。行きたい会社があるのであれば、きちんとキャリアと実績を積んで、その後のキャリアとして入社できるようにがんばるなど、中長期でキャリアパスを考えるのをおすすめします。
未経験者枠を採用している会社に就職・転職する
前述したように、中にはCGクリエイターを未経験者枠で募集している会社もあります。その中で、ハードながらも一生懸命学んでいける人は検討してみてもよいでしょう。未経験者枠で採用をしている会社は、未経験者枠の人が必要な条件が何かしらあるはずです。たとえば、多少薄給でもいいからとにかく人手が必要な会社などです。その場合は、あまり労働条件としてはよくない会社もあるので、働き方などをきちんとわかった上で、覚悟を決めて入社しましょう。
新卒一括採用でたくさん人を採用している、かつ教育に力を入れている大企業や、ベンチャーに近い会社の場合は未経験者を採用していることが多い印象です。しかし、CG業界は基本的にハードなことが多いので、スクールのように強く教育に注力できている会社は決して多いとは言いにくいです。まずは、自分の技術を上げることに集中しつつ、就職活動をするときはきちんと情報収集をして会社を選ぶようにしましょう。
キャリアパス
CGクリエイターのキャリアパスとしては、以下のようなパターンが主流です。
スペシャリスト
まずは全員プレイヤーとして入社して、技術を磨いていくのは共通項です。その中でも、管理系の業務ではなく、スペシャリストとして腕を磨いていくキャリアがこちらです。
業界内で注目されるようなトップクリエイターになれば、日本だけにとどまらず世界中から声がかかるようになるかもしれません。
マネジメント
プレイヤーとしてキャリアを歩む中で、後任育成やチーム全体のマネジメントを担当するようになることも多いです。マネジメントは、プレイヤーとは全く異なる技術が求められる仕事ですが、給料としてはプレイヤーよりも上がりやすい傾向があります。
その分、責任は伴うようになりますが、キャリアとしては希少性の高い経験となるかもしれません。
独立して会社設立・フリーランスになる
CGクリエイターは独立してフリーランスになりやすい職業です。自分の作品をSNSで発信してファンを作って、そこから案件を獲得している方も多いです。フリーランスは、作品制作以外にも請求から営業まで幅広い仕事を担うようになります。会社員より自分の望むような働き方をしやすい面もありますが、案件が獲得できなかったり、逆に仕事を詰め込みすぎたりしまうと、会社員以上に大変なこともあります。
報酬としては、自分の値付け次第にもなりますが、会社員時代よりも高額になることが多いです。ある程度安定的に収入を得られるようになった方は、仲間を作って会社を法人化する人もいます。最近は副業として別の会社の案件を受ける人もいるなど、キャリアはどんどん多様化しています。
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