週刊少年ジャンプで原作が連載され、そのディープな世界観と引き込まれるストーリー、激しいアクションシーンで一躍人気作品となったアニメ「呪術廻戦」。TVアニメの1期、2期だけでなく劇場版「呪術廻戦 0」は大ヒット作品となり、国民的作品の一つとなりました。
本稿では、呪術廻戦のアニメーション制作の裏側にスポットを当てて、どのようなソフトを使用しているのか、呪術廻戦のアニメ映像の魅力はどのようなところにあるのかなどをまとめて解説したいと思います。
呪術廻戦を作り上げた制作体系
「呪術廻戦」は、そのダークファンタジーな世界観と圧倒的なアクションシーンで注目を集めたアニメ作品です。その制作において使用された制作体系について、アニメと劇場版「呪術廻戦 0」での違いや共通点を探ってみましょう。
アニメと映画で制作体系は同じ?
アニメと映画といえども、基本的なアニメーション制作の工程や技術は共通しています。ただし、映画はより高い品質を求められることから、制作期間や予算が長大な場合が多いです。「呪術廻戦」1期、2期はテレビアニメとして制作されていますが、その美麗な映像表現から映画並の予算やスタッフを用意して制作されているのではないかと思われます。
ちなみに、呪術廻戦1期および劇場版呪術廻戦 0と呪術廻戦2期の監督は別の方が担当しています。1期および呪術廻戦 0は「牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE-」「THE GOD OF HIGH SCHOOL」などを手掛けた朴性厚監督が担当。呪術廻戦2期は「王様ランキング」や「チェンソーマン」を手掛けた御所園翔太監督が担当されています。作画の雰囲気が1期と2期で違うのは、監督の意向も影響しているのでしょう。2期のほうが色彩が明るめに表現されている傾向があります。ちなみに、2期の御所園翔太監督は、呪術廻戦2期が初めての監督作品だそうです。
呪術廻戦の作成に使用されたCGソフト
「呪術廻戦」では、2Dアニメーションと3DのCGアニメーションが組み合わさった映像が多く見られます。主要なアニメーション制作ソフトとしては、以下のようなものが使用されていると言われています。
- 3ds Max:オートデスク(Autodesk)が開発・販売している、主に3Dコンピュータグラフィックス(CG)やアニメーションの制作に使用されるプロフェッショナルなソフトウェアです。呪術廻戦では、「tyFlow」というプラグインを使用して制作されていることが明言されています。参考
- Blender:Blenderは、オープンソースで開発されている3Dコンピュータグラフィックス(CG)ソフトウェアです。3Dモデリング、アニメーション、レンダリング、シミュレーションなど、多岐にわたる機能を持ち、無料で利用できるため、世界中のクリエイターやアーティストに人気の高いツールです。参考
これらのソフトウェアを使い、2Dと3Dの要素を組み合わせて「呪術廻戦」の独特な映像を作り上げています。
CGアニメーションだからこそ作成できた呪術廻戦の名シーン
「呪術廻戦」には、その美しい映像とダイナミックなアクションが際立つ名シーンが数多く存在します。
シーン1: 呪術での戦闘シーン
主人公虎杖悠仁や伏黒恵などのバトルシーンは3DのCGアニメーションを活用することで、リアルな動きやエフェクトを実現しています。呪術廻戦0のぬるぬる動くパンダのバトルシーンを覚えている方も多いのではないでしょうか。
シーン2: 呪霊の描写
呪術廻戦に登場するクリーチャー、呪霊の描写は、ディテールを保ちつつもリアルな動きを演出するために3Dアニメーションが活用されています。一体として似たような呪霊は存在しておらず、登場する一体一体がオリジナリティを持っていて、恐ろしさだけでなく、見ていてどこか悲しくなるような独自のキャラクター性が表れています。呪術廻戦 0のムカデの呪霊や魚の呪霊はその足の動きや魚の量で見ている人をゾワッとさせるような表現となっており、モデリングやリギングはもちろん、リアルな動きの設定にかなり注力されたようです。
シーン3: 呪術のシンボル表現
呪術のシンボルやエフェクトは、2Dと3Dのアニメーションが組み合わさることで、独特な幻想的な表現が実現されています。主人公虎杖悠仁の技、逕庭拳や黒閃、領域展開のシーンなどは独自のエフェクトが使われており、必殺技らしい迫力があります。
シーン4: 背景の美術
第一話の学校のシーンや地下水道などのおどろおどろしい背景は、3Dモデリングやテクスチャリング技術を駆使して作り込まれており、「呪い」にスポットを当てた作品の世界観を深化させています。
シーン5: アクションシーンの臨場感
アクションシーンにおけるスピード感や臨場感は、3Dアニメーションの効果を最大限に引き出すことで、視聴者を引き込んでいます。呪術廻戦 0の夏油傑と乙骨憂太の戦闘や、2期の五条悟と禪院甚爾のバトルシーンはそのスピード感や迫力が顕著に表れています。
呪術廻戦を制作したアニメーションスタジオ「MAPPA」の特徴
「呪術廻戦」の制作を手掛けたアニメーションスタジオ「MAPPA」は、その特徴的な制作スタイルで知られています。
特徴1: クオリティ重視の制作
「MAPPA」は、一般的なアニメスタジオよりも制作期間や予算を十分にとり、高品質なアニメーション制作を追求しています。そのため、テレビアニメであっても映画とも遜色ないクオリティを実現しています。
特徴2: 多様なジャンルへの挑戦
「MAPPA」は、スポーツを題材にした「ユーリ!!! on ICE」から血みどろアニメの「チェンソーマン」、生活と戦争を扱った「この世界の片隅に」など、異なるジャンルのアニメーション作品に取り組むことで幅広いファン層を獲得しています。ジャンルの異なる作品に挑むことで表現の幅は広がりますし、その多様な制作実績が、彼らの特徴の一つです。
特徴3: 若手クリエイターの登用
新たな才能を育てるために、若手クリエイターへの機会を提供しています。これによって斬新なアイデアや技術が注入され、作品のクオリティを向上させています。また業界の大ベテランも登用するなど、多様な組織づくりこそが彼らの強みの源泉といえるかもしれません。
アニメーションスタジオ「MAPPA」へ就職するために必要なものとは?
アニメーションスタジオ「MAPPA」への就職を考えるなら、以下のスキルや資質が求められます。MAPPAは大人気のスタジオ。他のアニメーションスタジオと比較しても高い水準での技術やマインドセットが求められることは間違いありません。
必要なもの1: 創造力と表現力
MAPPAは扱う作品の幅も広く、表現の幅も広いです。チェンソーマンのような斬新な映像表現にもトライしたり、呪術廻戦のような迫力あるカメラワークの映像も日常的に作り続けたりしているため、クリエイティブな発想力や映像表現のスキルが求められます。また、求められた映像を作るだけでなく「こうなったら面白いんじゃない?」という自分のアイデアを映像としてスピーディに表現できることが重要です。
必要なもの2: アニメーション技術の習得
アニメーション制作に関する基本的な技術やソフトウェアの知識が必要です。独自のアニメーションスタイルを築くためにも重要な要素です。ただただソフトを使いこなすだけでなく、これまでの型にはまらないような新しい技術を取り入れたり、試してみる前のめりさが求められたりするでしょう。最新技術への関心の高さも必要となります。
必要なもの3: チームワークとコミュニケーション能力
アニメーション制作は複数のクリエイターが協力して行う作業です。チームでの協力や意見交換が円滑に行えるコミュニケーション能力が求められます。MAPPAは手掛ける作品にかける予算も大きく、大規模なプロジェクトとなります。すなわち、ステークホルダーが多いことが想定されるため、細やかにコミュニケーションを取り、高水準のアウトプットを決められた納期の中で連続的に出し続ける必要があります。作画技術だけでなく、高いコミュニケーションスキルが求められるのです。
MAPPAが手掛けた呪術廻戦 0は興行収入138億円は国内歴代第14位という脅威の数字を叩き出した作品です。そんな作品を手掛けるMAPPAは今もっとも注目を集めるアニメスタジオといっても過言ではないでしょう。MAPPAを目指す方は努力を惜しまず、実績を積み、愚直にいいアニメを作っていきましょう。
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まとめ
「呪術廻戦」の制作は、アニメと映画の制作体系を組み合わせ、クオリティの高いCGアニメーションを生み出す一大プロジェクトです。2Dと3Dのアニメーション、アクションシーンや背景の描写など、その裏側には多くの工夫と情熱が詰まっています。アニメーションスタジオ「MAPPA」の特徴や求められるスキルを知りつつ、これからのアニメ制作に対する新たな視点を持ってみましょう。これからMAPPAのようなアニメを作りたいという方、応援しております!