日本アニメ史に残る歴史的な大ヒット作となった、アニメ「鬼滅の刃」。大人から子供まで、知らない人はいないのではないでしょうか。

伝説的作品は果たしてどのように生まれたのか、CG制作の話を中心に解説します。

 

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アニメ「鬼滅の刃」を作り上げた制作体制とは?

アニメ 鬼滅の刃を手掛けたのは「空の境界」や「Fate」などで有名なアニメーション制作会社「ufotable」です。ハイクオリティなアニメーションながらも、ほぼ内製で制作をおこなっているというプロフェッショナル集団です。

ufotableでは、演出、アニメーターなどの作画を担うメンバーはもちろん、多くの制作会社がアウトソーシングすることが多い撮影やCGなどのデジタル映像部を自社に持つ制作体制となっており、社内で一気通貫で高クオリティの作品制作ができるようになっています。もちろん、原作へのリスペクトも忘れません。プロデューサーや監督が中心となり、原作のエッセンスを的確に捉え、アニメとしての魅力を最大限に引き出すために緻密な計画を立てます。そして、計画に沿ってプロジェクトを走らせていくという流れです。

アニメ「鬼滅の刃」の作成に使用されたCGソフトは何?

アニメ「鬼滅の刃」の制作には、CGソフトウェアが大いに活用されました。具体的には、「3ds Max」というソフトを使用しており、「tyFlow」などさまざまなプラグインを組み合わせて使用することで美麗な映像表現を実現させているようです。3ds Maxはリアルな映像表現や効果の追加に優れており、鬼滅の刃の世界観を一層引き立てるために重要な役割を果たしました。

CGアニメーションが際立つ鬼滅の刃の名シーン

美しく、迫力あるCGアニメーションが特徴の鬼滅の刃ですが、特に注目したシーンをピックアップして解説していきます。

水の呼吸

鬼滅の刃のCGと聞いて、まず主人公炭治郎の「水の呼吸」のシーンをイメージする方も多いのではないでしょうか。まるで実写のようななめらかな水や波紋の質感を出しながらも、浮世絵風で印象に残るこちらの映像。クリエイターの方々は実際に浮世絵の作品を深く研究したそうです。リアリティの追求に手間暇を惜しまないプロ意識が高水準のCGアニメーションにつながっているのでしょう。

無限城

もう一つの印象的なCGアニメーションの名シーンは、「無限城」の描写です。鬼滅の刃の世界観を象徴する重要な舞台である無限城は、奇妙な幾何学的な形状と迷宮のような構造が特徴です。CGを駆使することで、無限城の奇抜な形状や立体感を見事に表現し、視聴者に圧倒的な臨場感を与えました。

戦闘シーン

鬼滅の刃はキャラクター同士の激しい戦闘シーンも魅力の一つです。特に鬼との壮絶な戦いが描かれるシーンでは、スピーディーな動きや迫力あるアクションが要求されます。CGアニメーションは、物理的な動きやエフェクトの追加を容易にするため、戦闘シーンの迫真性を高めるのに貢献しました。刀と刀が交わる剣術の鮮やかな表現や妖しさを帯びた鬼の変身シーンなど、CGの力が存分に発揮されました。

非・戦闘シーン

一方で、鬼滅の刃は戦闘だけでなく、物語の感動的なシーンやキャラクターの心情を描いた非戦闘シーンも重要な要素です。例えば、主人公たちの人間性や感情表現、風景や季節の描写など、繊細な表現が求められます。CGアニメーションは、自然な表情や環境の描写においても優れた表現力を発揮し、物語の深みを一層引き立てています。

CG制作に必要なスキルとは?

続いて、これから「鬼滅の刃のような世界的作品を作りたい」と考える人向けに、CG制作において必要なスキルをまとめていきます。

デッサン力

CGクリエイターとして活動する上で、物体の形状を的確にとらえて描く「デッサン力」はすべての基礎となる能力です。CGアニメーションは実写と同様にキャラクターや刀のようなアイテムなどを立体的にとらえて、実際に形にしていくための視点が欠かせません。物体の形はもちろん、テクスチャ(質感)や、大きさ、色合い、影や光の当たり方などもイメージできる必要があります。プロのクリエイターでも毎日デッサンを欠かさない人がいるというのはこのためです。

CGソフトを扱う能力

「Maya」や鬼滅の刃で使用されている「3ds Max」など、CGソフトを用いて、理想の表現を追求していく能力も重要です。ソフトだけ使えても、基本となるデッサン力や想像力がないと良いアウトプットはできないので、基本となるデザインスキルは磨きつつ、CGソフトで頭の中にあるイメージを表現できるようにしていきましょう。プラグインを組み合わせることでできる表現は大きく広がるので、大変奥深い領域です。

コミュニケーション能力

CG制作の現場では、制作フローに沿ってさまざまなスタッフが密にコミュニケーションを取ることになります。アニメーション表現のような抽象度の高い領域では、脳内のイメージを簡潔に伝えたり、言語化してすり合わせたりするのが非常に重要になります。良い作品をつくるには、良い関係性とコミュニケーションからになるので、リスペクトを持って描くスタッフと向き合えるようにしましょう。個人として表現力が高くても、チームワークを乱すようでは意味がありません。アニメーション制作の現場は多種多様なプロフェッショナルで成り立っています。

 

アニメ「鬼滅の刃」を制作した「ufotable」の特徴

次に、鬼滅の刃を制作した「ufotable」は一体どんな特徴を持つ制作会社なのかを解説します。

作画、撮影、3DCGなど各セクションの連携が強い

ufotableは、前述したように作画スタッフだけでなく、撮影や3DCGなどさまざまなスタッフが自社の中に在籍しており、外注をあまりしていない制作会社です。それゆえに、社内の各セクションの連携が強かったり、こだわりポイントが共有されていたりしており、全社で高いクオリティの作品をつくる体制ができています。

アニメに関わるあらゆるスタッフを1社の中に揃えるというのは、決して簡単なことではありません。長い時間をかけて、ハイレベルなプロフェッショナルを社内に集めてきたufotableならではの芸当といえるでしょう。

また、ufotableは1つの時期に複数の作品を進行するのではなく、全社一丸となって1つの作品をつくるという文化があります。鬼滅の刃の1話には1年ほどの制作期間がかかったと言われており、それゆえの高いクオリティが表れているのでしょう。

原作へ理解が深い

ufotableの作品は、原作リスペクトが強いことで有名です。鬼滅の刃も、Fateも、原作以上に原作の魅力を引き出し、ファンの期待値を上回る表現をしています。その背景には、原作者との入念なすり合わせや、深い原作理解が根底にあります。

新作アニメが発表されたときに、制作会社がufotableだった場合の原作ファンの歓喜っぷりからも信頼度の高さがわかるでしょう。

監督のアニメーターとしてのレベルの高さ

鬼滅の刃の外崎春雄監督は自身もビジュアルイメージを描くことが多く、それが現場で表現を考える上で統一感やイメージ理解につながって作画の現場で活きてくることも多いようです。プロジェクト全体を担う監督自身がアウトプットのイメージをしっかり共有できるというのは大きな強みといえるでしょう。

もちろん、監督だけでなく、会社全体として非常に優秀なアニメーターが集っています。

ufotableへの就職で求められるものとは?

ufotableの採用サイトではさまざまな職種が募集されています。ufotableへの就職を目指すにはどのようなことが求められるのでしょうか?

各種ツール・開発言語への理解

ufotableの採用サイトによると、CGクリエイター系職種を目指すのであれば以下のようなツールや開発言語への理解は必要そうです。

中心となるツール

  • 3ds Max
  • After Effects
  • Photoshop

導入予定・導入中のツール

  • Maya
  • Houdini
  • Unreal Engine
  • Substance 3D
  • CLIP STUDIO PAINT
  • Illustrator
  • DaVinci Resolve

開発言語

  • Python
  • MAXScript
  • JavaScript
  • Google Apps Script

圧倒的なこだわり

ufotableは、職人集団だと言われることが多いです。作品を観ればそれが伝わるでしょう。デジタル映像であっても、熱が籠もるような作品を作るという覚悟が会社としてあり、そのこだわりは他のアニメーション会社を圧倒するほどです。

アウトソーシングを減らして、携わる作品数を絞る運営スタイルにもそれが表れているでしょう。ufotableに入社したいのであれば、徹底的に作品のことを考え抜き、それを形にし続ける忍耐力とやり抜く力が欠かせません。

気力と体力

ufotableに限りませんが、アニメーション制作の現場は常にバタバタな毎日が続きます。よい作品をつくるために、粘り強く関係各所とコミュニケーションをとったり、細部を修正し続けたりするなどの気力と体力が必要です。

最新技術への興味と貪欲に取り入れる姿勢

アニメーションの世界は次々と新しい技術が生まれており、意欲的な映像表現をするには技術へのこだわりも欠かせません。新しい技術を積極的に取り入れて、現場の運用に活かしていく姿勢は必要です。

効率的な制作フローを考える力

これは作画やCG担当というよりはもう少しディレクションよりの考えですが、どうすればより効率的によりよい映像表現をチームで作れるかを考えられる人は重宝されるでしょう。

 

ここに書かれているスキルや素養はほんの一部ですが、職人集団ufotableに入社したいのであれば、まずは基礎となるアニメーション技術を磨き、経験値を積み、ある程度のレベルまで達してからドアを叩くのをおすすめします。他のアニメーション制作会社と比較しても狭き門ではありますが、もし入社できたらきっとエキサイティングな世界があなたを待っているでしょう。

CGアニメーションに関する知識を身につけるなら”デジタルハリウッド”

将来的にはufotableのようなアニメーション制作会社に入社したいけど、まずは基礎となるスキルを身に着けたいという方におすすめなのが、デジハリ・オンラインスクールです。

デジハリ・オンラインスクールは、1994年以降多くのクリエイターを輩出してきたデジタルハリウッドが運営するオンラインスクール。CG制作についての講座も取り扱っており、ufotableの扱う3ds Maxやmayaなどの技術も身につけられます。

CGアニメーションの技術は、独学で学ぶという手段もありますが、フィードバックをいかに受けるかが非常に重要です。スクールであれば、プロフェッショナルからのフィードバックも受けやすく、上達の速度が早いだけでなく、途中離脱も防ぎやすいです。

地方に住んでいて通える学校がないという方にもオンラインスクールはおすすめ。仕事や学校の合間に学ぶこともできます。これからCGアニメーションの世界に飛び込みたい方は、ぜひ講座ページをチェックしてみてください。

 

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まとめ

アニメ「鬼滅の刃」は、その圧倒的なCGアニメーションや美しい映像表現によって注目を浴びました。制作体制ではプロデューサーや監督の指導の下、ufotableを含む複数のスタジオが協力して作品を作り上げています。これからufotableのようなアニメーション制作の世界に飛び込みたい方は、ぜひufotableの作品をじっくりと研究しつつ、自分の技術を磨いてみてはいかがでしょうか。決して簡単な領域ではありませんが、世界に羽ばたけるチャンスでもあります。ぜひ、トップクリエイターを目指してがんばってください。