みなさんは、車や家電、家具、雑貨などを買うとき、製品を選ぶポイントとして何に注目しますか?機能・話題性・価格など、さまざまな要素がありますが、「デザインの良さ」も大きなポイントですよね。世間で話題となるヒット商品の多くは、デザイン性の高さも売りの1つになっています。

一般的に工業製品のデザインのことを「プロダクトデザイン」と言い、 そのデザインを考案する人を「プロダクトデザイナー」と呼びます。プロダクトデザイナーは昔から人気の高い職業ですが、仕事に就くまでの過程や具体的な仕事内容、年収は実際のところどうなのでしょうか?「プロダクトデザイナー事情」をまとめてみました。

 

プロダクトデザイナーの仕事を知ろう

プロダクトデザイナーが携わる製品ジャンルは多岐にわたります。身の周りの形ある物は全て、彼らが考え出す製品イメージから生まれています。1本のペンから旅客ジェット機まで、あらゆる物はデザインされた上で製品化されていますが、このデザインを考案するのがプロダクトデザイナーなのです。

それでは、デザインはどのように生まれるのでしょうか?制作過程を見てみましょう。

 

1.製品のコンセプトを理解して、形にするために研究する

クライアントであるメーカーや社内製品企画者などが企画した製品をデザインする際に、世間一般の流行や傾向などを反映するために市場調査を行います。そして、その製品を使う目的やシチュエーション、ターゲットとなる消費者など、想定されるあらゆる条件を踏まえて、どのような形にするか構想を練っていきます。

 

2.ラフスケッチを制作する

製品のコンセプトに基づき、次に平面図としてデザインを考案。製品の機能や使う素材、安全性などを考慮し、ラフスケッチで形として表していきます。パーツごとのデザインや全体図など、何通りものアイデアを図にして描きます。

 

3.スケッチを清書し、模型などを制作する

発注元のクライアントや社内製品企画者などにデザインを提案するため、スケッチ画を清書。さらに、立体的に見せる3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)や模型を制作することも。

 

4.デザインを提案する

清書デザイン画や3DCG、模型などを使って、発注元にデザインを提案します。

 

5.最終デザインを完成する

発注元から意見や修正依頼があれば応じ、手を加えて調整。最終デザインを完成します。

 

以上が、デザイン誕生までのおおまかな作業工程です。デザイン制作は1人で全て行う場合もあれば、複数人数によるチーム制で動くこともあり、さまざまです。小さな製品などは1人のデザイナーがデザイン完成まで単独で担当することがあり、対して自動車のように大型製品だと数十人のデザイナーが一緒に2~3年かけて開発することが多いようです。

 

プロダクトデザイナーに向いている人とは?

プロダクトデザイナーに向いている人
プロダクトデザイナーは、一般的なグラフィックデザイナーと大きく異なる点があります。

1つは、“立体的な物への探究心”を持っていること。製品の機能性や安全性、使用感などは、デザインのセンスや色彩感覚などよりも、構造や形にこだわる探究心がなければ追求できません。

そしてもう1つは、コミュニケーション能力があること。発注元のメーカーや社内販売企画者などに提案・プレゼンすることも、大切な業務です。

「デザイナー」という職業でありつつ、センスの良さだけでなく、リサーチや研究、人との折衝など、多くの能力を求められる仕事なのです。

 

プロダクトデザイナーになるには?

プロダクトデザイナーを目指す人の多くが、専門知識や技術を学びつつ芸術センスを磨くため、大学や専門学校などに通います。大学は、工学部や芸術学部、美術学部などにプロダクトデザインを専攻できる学科が多く設置されています。また、専門学校にもデザイン専攻科などがあります。

大学や専門学校で知識や技術を学んだのち、大半はメーカーやプロダクトデザイン制作会社などに就職します。メーカーでは「インハウスデザイナー(企業内デザイナー)」として、制作会社では「制作会社デザイナー」として働き、実務の中でデザインのノウハウやプレゼン能力などを培っていきます。そして、経験を積んでから独立して自らの制作事務所を立ち上げる人もいます。

 

プロダクトデザイナーの年収は?

プロダクトデザイナーの年収
前述のとおり、プロダクトデザイナーの多くは、メーカーかプロダクトデザイン制作会社で社員・スタッフとして働いています。他のクリエイティブ職と比べて平均年収は高めですが、勤める会社の規模や雇用形態により格差はあります。

メーカーに勤めるインハウスデザイナーの平均年収は、新入社員で300万円前後、勤続年数10年目で700~1000万円程度といわれており、全世代では700万円ほどです。

一方、制作会社デザイナーの平均年収は、新入社員で250万円前後、10年目で400~500万円程度。全世代では450万円程度、とインハウスデザイナーに比べると低めです。ただし、手掛ける製品ジャンルが幅広く、実力をつけて独立を目指したい人にとっては良い環境であることも。

そしてフリーランスは、仕事がなければほぼゼロですが、ある程度名前が売れてくれば600~1,000万円程度に。大ヒット製品を手掛けるヒットメーカーになると数千万円から億単位の年収を得る人も中にはいます。

 

まとめ

私たちの生活に欠かすことのできないプロダクトデザインの仕事。ときに社会現象となるほどの人気商品を生み出したり、消費者から長く愛される製品を手がけたり…、実績次第で大きなやりがいを感じられることでしょう。物作りが好きな方は、将来の仕事としてぜひご検討ください。